はじめに

 赤ちゃんのお誕生を心からお祝い申し上げます。本当におめでとうございます。
 お母さんのおなかの中で慈しみ、育まれた赤ちゃんは、外界に出てさぞかし驚いていることでしょう。
 その第一声が「おぎゃあ」という産声でしたね。産声を耳にしてママもパパも「生まれた!新しい家族の誕生だ」と心が浮き立つ思いだったことでしょう。
産湯を使い、白い産着に包まれた赤ちゃんは、はにかんだ表情でお母さんの横に寝かせられています。小さな、小さな口でおっぱいを吸い、あくびをし、小さな手足を伸ばして一人前に伸びをして見せます。
 小さな体で与えられた命の営みを始めた赤ちゃん。「こんにちは赤ちゃん、私がママよ」と思わず声をかけてしまいたくなります。
 私たちもこうして誕生し、両親に大切に育てられたのだと改めて思いをめぐらせます。わが子の誕生は、人として新しい命を預けられた責任も感じます。そしてまた命を育んでいく、子育てという長くて遠い道のりで与えられるであろう楽しみや幸福感に胸が高鳴ります。
 おっぱいを飲ませながら、あるいはかすかな寝息を立てて寝ている赤ちゃんの顔をご両親で見つめながら、「パパに似てるかしら?」「ママに似てるかな?」「将来どんなふうに育っていくのかしら?」「きっと大物になるよ」などと赤ちゃんに対する大きな夢と希望で思わず笑みをこぼしてしまわれたことでしょう。

 そんなときに、お医者さまから「耳がきこえないかもしれません」と新生児聴覚スクリーニング検査結果のリファー(要再検査)を知らされたのは、本当にショックでしたね。頭の中が真っ白になってしまわれた方もおいででしょう。「なぜ、なぜ、私の赤ちゃんが?」と?(はてな)マークが頭の中を駆け巡り、「夢ではないか?いやきっと夢を見ているのだ」と思おうとされたことでしょう。
 でも赤ちゃんはそんなことを何も知らずにおっぱいを飲んで、泣いて、笑っています。赤ちゃんはママを頼り、ママの温かい胸を欲し、ママやパパの優しい笑顔を待っています。
 さあ、ちょっと深呼吸をしてこの本のページをめくってみてください。 

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