こころ、だいじょうぶ

赤ちゃんがきこえていないかもしれないと知らされたお母さん・お父さんは、今、容易にはことばにできないくらい複雑な思いのなかにいらっしゃることと思います。

  信じられないうそでしょう?!
  どういうことなの?
  どうすればいいの?誰か教えて
  わたしが悪かったの?
  ぼくが何をしたと言うのだ?!
  とても笑顔になれない
  知りたくなどなかった
  まわりのお母さんたちがうらやましい
  神さま、お願いですから・・・

 どんな感情や考えも、どうかあなたの正直な気持ちとして認めてあげてください。
たとえ、それがとても否定的な内容であったとしても。
赤ちゃんとの長いつきあい、「ありのまま」から始めてください。親だからといって、最初から、わが子にすてきな感情ばかり抱けるとは限りません。そういう人もいるし、そうでない人もいます。
 大切なのは、感情を責めないこと、感情にうそをつかせないこと。どんなに否定的な思いであっても、認めてもらえれば、心のなかに居場所を得ます。居場所を得て落ち着けば、感情が勝手に暴れだすことはありません。
 赤ちゃんとのコミュニケーションの始まりは、感情に彩られた「心の状態」のキャッチボール。
 お母さん・お父さんの気持ちが、身体の弛緩(しかん)や表情をとおして、赤ちゃんの身体と心に伝わっていきます。

 ふんわりと温かな心の状態は、赤ちゃんに「ママも、パパも、あなたも、だいじょうぶよ」というメッセージを伝えます。
 赤ちゃんの身体も柔らかくなって、満足げな微笑を返してくれることでしょう。

 赤ちゃんと一番長い時間を共にする人がお母さんだとすれば、お母さんの心を守ることが一番大切。
 最強のサポーターはお父さん。
 それから、おじいちゃんやおばあちゃん。どうか、お母さんを励ましすぎないでください。お説教は禁物です。知識も大事ですが、頭だけの理解は、いつしか心に負担をかけます。
 お母さんの瞳が曇らぬ思いで赤ちゃんを見つめ、お母さんの心と赤ちゃんの心が出会うまで、しばらく時間が必要かもしれません。それまでは、お母さんが頑張りすぎないように、どうぞ見守ってあげてください。

 精密検査を待つ数ヶ月、赤ちゃんは驚くほどの能力を発揮してくれます。
 チラチラ揺れる木漏れ日を、興味深く見つめます。
 大人の表情をまねて、小さな舌をちょっと不器用に突き出します。
 振ってもらったおもちゃに向かって、手や腕、おなかや足まで動きます。
 日に日に成長していく赤ちゃんを観察できたら、発見の一つひとつを「すごいなあ!」とほめてあげてください。それから、そんな発見のできたご自身を「たいしたものだ」と誇らしく感じてください。
 ママやパパのうれしい笑顔が、赤ちゃんに喜びを伝えます。
 「自分は人に喜びを与える存在なのだ」と、知ることから始まる人生はすてきです。

 伝えられる、
 受けとめてもらえる、
 分かち合える。
 そうした実感から、「人とかかわる能力」が発達していきます。
 ですから、さまざまなやりとりを、全身で楽しみたいですね。
 ママのこころ、パパのこころ、赤ちゃんのこころ、

 だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ!

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