私たちが考えたこと 3/3

5.学力の伸長

学校の授業では、学習グループを小さくしても個々に応じた授業を進めることは困難を極めています。従って、理解に時間のかかる子どもは、十分に消化できないまま進められ、理解の速い子どもにとっては授業がつまらない。いずれの子どもをも、持てる力を伸ばしきれない現状があります。そのために、将来大学進学など高等教育を目指すためには、ろう学校の教育では無理である、との風評が定着し、保護者は、子どものコミュニケーションや聴覚障害の実際を二の次に、地域の学校、即ち聞こえる子どもたちの仲間に入れて学ばせようとしてきました。しかし、この方法は、理念上は素晴らしいと思われますが、実生活上では、机上での学習は一定のレベルで進むことができても徐々に子どもの心身を蝕み、不適応状態を作り出すことも少なくありません。
学んだことを繰り返し練習して自身の心身の一部とする、学校で理解できなかった箇所を復習する、さらに先へ進むなど、それぞれに合わせた学力の補充を図る場所と機会が用意されることにより、それぞれの子どもが自信をもって学習に臨めると考えました。

6.遊びで育つ生きる力

生きる力とは、幼稚園や学校で学習として学ぶことと実生活での体験とが融合したものです。
子どもにとっての生活体験として、最も重要で大きな位置を占めるのは遊びです。
遊びには、場・時間・友達の要素が欠かせない。広域に点在して生活する聴覚に障害のある子どもたちには、この環境を意図的に作ってやることが必要です。環境さえあれば、遊びの内容や材料は、子どもたち自身が自由に楽しく作り出すことができるのです。
子どもたちが遊びを通して刺激される知的好奇心は、学習時に於ける探究の姿勢に結びつき、行動する力を向上させる。遊びから培われる雑多な知恵や思考は、繋がり合いながら徐々に纏まった確かなものへと発展します。

7.授業以外で学んだものは、間接的に授業を支える

意識を集中し、よく視ていないと野球のバットや卓球のラケットにボールを当てることはできない。野球や卓球などがうまくなることは、これらの力が育つことです。 仲よく順番を決めて物事に当たることができるということは、その時々の条件を素早く推し量り適切に対応できる力が育っていることです。この様な、体験を通して身につけた英知は全て、充実した授業を効率よく進める、学んだことをさらに深める、そして、ものごとをよりよく理解することができる等の基本条件と一致するのです。

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