聴覚を活用するとは
「聴覚活用」と言われると、聴覚障害児の教育にとって大切なことだと理解していても、補聴器やオージオメーター、音の物理の話しが出てきて難しいという印象があるかも知れません。しかし、みなさんも日頃から聴覚を活用しています。
例えば、私の息子は自分の部屋でマンガやゲームばかりしているのですが、母親の足音を聞いたとたんゲームをしまって参考書を読み始めます。まさにこれか聴覚活用です。
音を聞き取ると言うことは、周囲から対象となる音を区別し、その音に付加している知識や情報を得ることです。息子の場合も,様々な音の中から母親の足音を区別して聞き出し、その足音に「怖いお母ちゃんが近づいてきた」という情報を見いだしているわけです。また、足音を聞いたからといって生まれつき参考書を開く子どもはいません。すなわち聴覚活用は後天的に形成されていくものなのです。
聴覚活用とは、ことばや音楽の聞き取りをはじめ,様々な音を聞き取って、自らの生活を豊かにする“知識や情報”をそこから得る能力のことです。ですから、聞こえに障害のある子どもにとっても、ただ補聴器や人工内耳をして音が聞こえると言うことだけでなく、音とその音の持つ意味を結びつけるような活動が重要になってきます。
聴覚の活用と言えば、音声のコミュニケーションばかりにとらわれがちですが、子どもたちの聴覚の可能性を広く捉えることが大切です。そのことは、聴覚障害児にとって、なにがどのように聞こえていないのかを、理解することにもつながっていきます。