手話について
手話には大きく分けて以下の3つのタイプの手話があり、それぞれ特徴がありますが、大塚ろう学校では基本的には「中間型手話」を用いて指導を行います。発達の早期から手話を用いた豊かなコミュニケーションの力を身につけさせると同時に、補聴器を装用し聴覚の活用を最大限に伸ばすよう努めています。そのために口話と併用できる中間型手話を用いています。
文法と用法 | 特徴 |
日本語対応手話 (同時法) | |
日本語の語順に従う。 口話と併用する。 1形態素に1手話を原則とする。 規約性が大きい。 助詞や助動詞などの機能語を表示する。 | 手話が枠記号となり、口話が文化記号となるため、文の構造が明確になり、読話しやすくなる。 主語や目的語などの関係を空間ではなく指文字で表すので、ある程度日本語に習熟していないとわかりにくい。 学習が高度化して伝達する情報量が多くなると対応できにくい。 成人聴覚障害者は通常は用いない。 |
中間型手話 (口話併用手話) | |
ほぼ日本語の語順に従う。 基本的に口話を併用するが音声を伴わない場合もある。 助詞や助動詞は口話で表現したり、空間を用いる。 | 手話のわかり易さを確保しながら、助詞や助動詞を口話に託すことによって速度や発信負担を軽減し、スピーディに会話が出来る。 口話との併用が可能な限り、映像性の高い日本手話的表現を使うので、日本語に習熟していなくとも意味をとりやすくなる。 手話の単語を知らない時など聴者では手話が落ちやすい。 幼児の場合、ある程度日本語が習得されないと併用できない。 |
日本手話 (伝統的手話) | |
日本語とは異なる独自の文法をもつ言語。 音声は併用しない。 映像性(写像性)が強い。 | 日本語とは文法構造が異なるため口話と併用できない。 手の形や運動の強さ・速さ・大きさ、表情、視線などをトータルに使って語調的情報や意味的情報を視覚的に伝達できるので、視覚像が形成され記憶されやすい。 手話を使う集団の中で子供は自然習得するが、聴者が習得するのはかなりの時間と努力が必要。 ろう家庭の場合、通常、第一言語として習得される。 |
手話の特徴
手話の長所または効用
a 手の動きの大小、強弱、遅速などで気持ちを表現できる
b 手話そのものが意味を伝えやすいので発達早期から身につけることができ、概念形成など認知的・言語的な発達が促進される
c 発達早期にコミュニケーションが成立し母子関係が安定する
d 自分自身でフイードバックできるので、正確に発信でき、 ̄安心 してゆとりをもって会話できる
e 聴覚や読話、発音と併用でき、正確・効率的な会話ができる
f 距離、方向、騒音などでも他のモードほど影響を受けない0 また、情報伝達量が多く、伝達速度も比較的速いので集団での討論や交流、家族での団らんなどに効果的である
g 家庭で使うことで家族間のコミュニケーションがスムーズになり、コミュニケーションの成就感や家族内での所属感がもてる
h 手話を自分のことばとしてもつことで聴覚障害者であることに自信や誇りがもて、聴者への劣等感から解放される
i 口話の習得の難しい重複障害児や聴力の厳しい児童でも言語・コミュニケーション手段として習得できる
手話の短所または限界
a 社会的流通性に欠ける(手話を使える聴者が少ない)
b 日本語の語彙の意味的側面は表せるが、音の表示はできない
c 収集されている手話の語彙数に限りがある
d 書記言語(書きことば)をもたないので、話の内容を記述するには書記日本語に翻訳する必要がある