私たちが考えたこと 1/3

聴覚に障害のある子どものもつ以下のような諸事情から、聴覚に障害のある子どもたちの持てる力を充実発達させるために、学校での授業時間以外の余暇をも十分に活用できる場や機会を作ることが従前から課題でありました。放課後や学校休業日をも活用して子育て支援に当たることは、子ども自身の成長発達を促すことのみにとどまらず、聴覚障害児をもつ保護者が安心して子育てに関われる状況を作り、ボランティアの方々にも子どもの育成に携わることができる喜びを感じて頂けると考えて実施しております。

1.生活環境と背景

聴覚に障害のある子どもは、1,000人~1,500人に一人の割合で誕生します。さらに、その子ども達の90%以上は、聞こえる家族の中に生まれています。聴覚に障害がある子どもは、生まれながらにして、家族からも地域からも、つまり、心理的にも物理的にも遠い存在、ひとりぼっちにおかれた環境の下で、生きる力を育む運命にあると言えるのです。
そのような子どもたちの多くは、ろう学校で教育を受けます。ろう学校は、都道府県立の特別支援学校の一つなので、住んでいる地域の学校ではありません。実際、東京都内では、幼稚部、小学部、中学部、高等部本科は、各々3つのろう学校に設置、高等部専攻科は2校に設置されており、子どもたちは、そのいずれかに自宅から通学しています。通学には、当然長時間を要しています。

2.言語の発達

人間にとって最も重要なものは思考する力であり、その手段は言語です。聴覚に障害のある子どもたちが、最も獲得しやすい言語なのは、残された感覚(主に視覚)を活用する手話です。その言語の獲得には、一定の条件が必要とされます。通常私たちが使用する音声言語と手話の言語としての発達を比べた場合、

① 聴覚障害の診断は、早くても生後6か月以降になります。そのため、言語獲得のための環境設定や育成の開始が遅れます。通常の子どもであれば、生まれた瞬間から音声言語で話しかけられ、言語の学習が始まるわけです。

② 最も適切な言語の教師であるはずの家族は、聴覚に障害のある子どもに理解しやすい手話を、学びながら、それを使って子育てをする事になります。「言葉の発達には言葉のお風呂に入れる状況が大切」と言われますが、聞こえる家族では、「手話での言葉のお風呂に入れる」様な状況を作ることができません。

③ 家族からの話しかけの多くは、手話を伴わない音声言語のみによる話しかけである。

④ 最も言語が発達する時期は、3歳までです。

⑤ 手話と音声日本語の語順は異なります。

⑥ 手話には、書記言語がないので、音声日本語の書記言語を習得して使わなければならない等々の音声言語環境との違いや意図的に手話による言語環境を作らないと自然には整備されないという課題をもっている。

そして、何より言語が発達するためには、同じ言語を使用する集団が不可欠です。

関連記事